ニューノーマルか、それとも悪いアイデアか？通常とは異なる貨物輸送の依頼にご注意ください

船会社は、従来であればコンテナで輸送されていたようなブレイクバルク貨物を、ジャンボバッグとも呼ばれるフレコンバッグ(FIBC: Flexible Intermediate Bulk Container)または中間バルクコンテナ (IBC: Intermediate bulk containers)を使って、ばら積み貨物船のホールド内に積載して輸送できる方法を模索しています。

輸送方法の採択

ばら積み貨物船の運航会社は、通常はコンテナで輸送される貨物をブレイクバルクとして運送する必要が生じた場合、同貨物に係るリスクについて十分に注意を払う必要があります。すべてのコンテナ貨物がこの輸送方法に適しているわけではありません。

ブレイクバルクとして運送される可能性がある貨物は、次のような貨物が挙げられます。

袋詰めのコーヒー

コーヒー豆は商品価値が高く、現在の価格ではアラビカ種の場合は1キロ当たり約6ドルであり、ロブスタ種は大体その半値です。コーヒー豆の輸送は、一般的に認識されている運送方法でも運送人にとっては要注意といえます。コーヒー豆は吸湿性が高く、大量の水分を含む性質があるため、結露が発生しやすく、それがバッグを濡らしてしまいます。

コーヒー豆の一般的な輸送経路は、温暖湿潤な栽培地帯から寒冷な気候への輸送となっており、この輸送経路では結露が発生する可能性が非常に高まります。

ホールド内での貨物の水濡れの主な原因として、船体の構造部材に発生しやすい結露（船体の汗濡れ）が挙げられ、この結露がバッグの表面に付着することがバッグの濡れに繋がります。現在、業界での慣習とされている一般的なドライコンテナで袋詰めコーヒー豆を輸送する場合も、 同様のリスクがあります。ドライコンテナ内も換気が非常に限られており、湿気を効果的に排出することができません。そのため、厚紙やクラフト紙を養生することで貨物を保護します。しかしながら、この方法の有効性には賛否があります。

貨物運輸の専門家であるBMT社は、貨物へのカビの発生や濡れ損のリスクが高まるとして、袋詰めコーヒーをカーゴホールド内に積載する輸送を避けるようにアドバイスしています。十分なダンネージ（荷敷）を実施しても貨物と船体構造部材の接触を防ぐことは非常に難しく、ホールド内の換気もその効果に限界があります。また、こちらの記事もお伝えしたように、ホールド内へ換気用のチャネルを設置する方法もありますが、その効果は実証されていません。

なお、袋詰めコーヒー豆をブレイクバルクとして輸送する場合、その上に積まれた貨物の重さによって豆が割れるなどのリスクも考えられます。

化学物質

ピロ亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulphite)などの化学物質は、従来からコンテナで輸送されておりましたが、昨今はジャンボバッグを用いたブレイクバルク貨物としても運ばれています。

過積載もしくは不適切な積み付けがあった場合、ジャンボバッグが破れ、中身がホールド内に流出する可能性があります。

このような事態は、ホールド内で業務にあたる船員へ健康被害を及ぼすだけでなく、隣接する貨物やホールド内の鉄骨造に損傷を与える危険性もあります。

自動車部品

自動車製造に使用されるパーツは、ここ最近でブレイクバルク貨物としてばら積み貨物船に積荷される機会が増えており、通常はクレートやパレットに梱包されています。荷主は、クレートや梱包材料による保護が適切であることを確認するだけでなく、これらがホールド内で適切に積み込まれ、かつ、固縛されていることを確認することも重要になります。

情報収集の必要性

海運業界はこれまで、顧客からの新たなリクエストに対応し、円滑な貿易を維持するために様々な問題に取り組んできました。しかし、このような慣例と異なる方法での貨物輸送を要求され、特に貨物が危険物や高価格である場合には、慎重に精査しなければなりません。

特に、一部の医薬品などの温度管理が必要な高価値な貨物に関しては、リーファーコンテナの不足が報告されており、一つの懸念材料となります。

その他に、穀物のバルク積みの上にIBCタンクを積載し貨物を輸送でした場合、効果的な薫蒸や換気ができず、穀物のクレームにつながる可能性があります。

このような商慣習とは異なる方法での貨物手配において、貨物を安全かつ適切な手順に従って運送することができない場合、または、その他の理由により運送が不適切と判断される場合、保険カバーに抵触する可能性があります。また、希少価値の高い貨物を輸送の場合、その輸送に使用すされる手立ての管理責任者の事前承認が必要となることもあります。通常とは異なる方法での貨物輸送により、少しでもリスクの変化や変更が生じる際には、保険カバーが確実に提供されるよう、当クラブへ迅速に情報を開示ください。

また、用船者より商慣習とは異なる方法での貨物輸送が要請された場合、法的助言を求める必要があります。用船契約の条件によっては、特に法令の遵守が不可能または安全性が脅かされる場合、そのような要請は違法と解釈される場合があります。船主の皆様におかれましては、このような要請を受けた場合、用船者より補償状(LOI)の取得を検討する必要があるかもしれません。

さらに詳しい情報

ノースによるロスプリベンション資料「Briefing on the Carriage of Break-Bulk Cargoes」をご一読ください。 https://www.nepia.com/publications/carriage-of-break-bulk-cargoes-briefing/

詳細については、ノースの通常の担当者へお問い合わせ頂けますと幸いです。