新型コロナウイルスおよび詐欺対策

船主および乗組員は、検査および個人用防護具の要件を決定する際のリスクを認識し、購入時に注意を払う必要がある。

検査キット

一部の国では、大規模な検査を実施することで新型コロナウイルスの流行を抑制することに大きな成功を収めている。さらに、今般発行された欧州委員会の「船舶上の乗組員、船客およびその他乗船者の健康、送還及び移動手配の保護に関するガイドライン」では、加盟国に対し、乗船前に乗組員が検査を受けるべきであると勧告している。これに加えて、本船の着岸前に多くの港湾にて強制される厳格な船舶隔離や検疫の要請に伴い、本船への検査キットの購入を検討するだろう。しかし、その際注意しなければならないのは利用可能な検査キットの信頼性と適合性である。

検査には2種類の方法がある。ウイルス検査（または拭き取り採取検査）は、新型コロナウイルスの遺伝子発現の存在を検出するものである。これは、個人が新型コロナウイルスに現在感染しているかどうかを調べるものだ。一方、抗体検査では、ウイルスに対する免疫反応を調べ、過去に感染したかどうかが分かる。

短時間で検査可能な抗体検査キットが普及してきている。しかし、自由市場での検査キットの取得を許すと、医療従事者や入院患者の検査に絶対的に必要とされる供給量への影響が懸念される。なかには抗体検査キットの使用を推奨していない政府もある。例えばイングランド公衆衛生局は次のように警告している。

• 検査精度に関する情報が乏しい。
• 新型コロナウイルス感染時に患者の抗体反応がどのように変化するかについての情報ははっきりしていない。
• 陽性／陰性の結果の信頼度が低い。
• 一般社会での新型コロナウイルス感染診断に関し、この検査の適合性について証明されていない。

医療機関では数時間以内に結果の出るウイルス検査を実施できる。しかし、待ち時間によるため、場合によっては乗組員が検査結果を受け取るまでに数日間を要する場合もあり、その間、乗組員を隔離しておかなければならない。

個人用防護具

各国のロックダウン対策が緩和されると、マスクおよび使い捨て手袋の使用頻度が増加し、一部の国ではこれが正式に推奨されるだろう。しかし、現状では、依然として他者との距離を保つことが、新型コロナウイルスから自分自身を守ることだけでなく、周囲への感染リスクを減らすための最善の対策である。個人用防護具を使用したとからといってソーシャルディスタンスを実施しなくてもいいというわけではない。油断は禁物である。

多くの方には、新型コロナウイルス対策として個人用防護具を提供している会社から既に営業メールが届いているかもしれない。個人用防護具が世界的に不足しているという現状は、多くの人にとってビジネスチャンスでもある。次のような販売業者には注意することが重要である。

• 詐欺業者（商品代金を支払っても商品が届かない）
• 品質の低い商品を販売している業者

ICCは詐欺に警鐘

国際商工会議所（ICC）は、コロナウイルス感染拡大に乗じて詐欺行為やサイバー攻撃を行う詐欺師ついて警鐘を鳴らしている。ICCのIMB Commercial Crime International（CCI）報告書の2020年4月版では、現在の状況を悪用した様々な詐欺事例が取り上げられている。英国の全国不正行為情報局（NFIB）は、多くの事例はオンライン販売詐欺であり、特に消毒剤やマスクが届いていないものに関連していると警告している。

また、医療機関、税務当局、ニュースメディア、パンデミックに乗じ投資を勧める企業などを装い送信されたコロナウイルス関連のフィッシングメール詐欺も増加している。新型コロナウイルスの最新情報への切望は、医療機関を支援し感染拡大防止に貢献したいとの想いと相俟って、こちらの警戒を緩ませ、このような詐欺師から送信されたメールのリンクをクリックしてしまう可能性がある。さらにインターポルから報告されている衝撃的な事例は、病院や診療所を装い家族や親戚の命を救うために資金を要求してくる詐欺電話である。

その他、International Transport Intermediaries Club（ITIC）が報告した新型コロナウイルスに関連する医療検査サービスの不正請求書の発行詐欺などがある。

警戒を怠るな！

多くの方が互いに支え合い協力しているが、私達の恐怖心や善意を悪用し私腹を肥やす人もいるということを忘れてはならない。

ICCの2020年4月版の『Commercial Crime International（CCI）Report』で紹介されている記事「新型コロナウイルス：パンデミックを悪用した詐欺が急増」から一部抜粋。