2022年9月6日更新
2021年11月、英国控訴院は、高等法院の下した「船舶がレイタイムを超過した場合にデマレージに加えて損害賠償金を回収する権利を有する」という判断を覆したことをご案内いたしました。
英国控訴院は、K Line Pte Ltd v. Priminds Shipping (HK) Co Ltd [2020] EWHC 2373 (Comm) (The Eternal Bliss) において、用船者がレイタイム内に荷役作業を完了できなかったという用船契約違反に起因する損害はデマレージの支払いにより全て清算されると判断を行っておりました。
2022年9月、英国最高裁は上告を認めました。
2021年の控訴院判決はこちらでご確認いただけます。
2021年11月18日更新
英国の控訴院はこのたび、レイタイムを超過した場合に関して、船主がデマレージに加えて損害賠償金を回収する権利があるとした高等法院の判断を覆しました。控訴院は、K Line Pte Ltd v. Priminds Shipping (HK) Co Ltd [2020] EWHC 2373 (Comm) (The Eternal Bliss) において、レイタイム継続中に荷役作業を完了できないという用船契約違反に起因する損害は、デマレージの支払いにより損害全体が清算されるものと判断しました。
この事件が今後、英国最高裁で審議されるかどうかは不明です。
判決文は https://www.bailii.org/ew/cases/EWCA/Civ/2021/1712.html でご覧いただけます。
2020年10月28日更新
イギリスの裁判所は、船舶が停泊期間を超えた場合に、船主が滞船料に加えて損害賠償を請求する権利を有するとの判決を下した。
事実関係
本船エターナル・ブリス(Eternal Bliss)号はブラジルのトゥバラン(Tubarao)で大豆を積み込み、中国の竜口(Langkou)で揚荷をした。本船は船混みと保管場所の不足のため、竜口港に31日間停泊し待機していた。
中国での荷揚げ時、保管中に大部分の貨物倉の積み荷にカビが生えて固まっていることが判明した。 船主は600万米ドルの担保を提供し、後日、110万米ドルの貨物損害賠償金を支払った。 船主は、当該損害を航海用船者から損害賠償として回収しようとした。
判決
当事者は、高等法院が以下の法的質問に答えるべきであることに合意した。すなわち、用船者の船舶が停泊期間を超えて荷揚港で足止めされ、それによる航海の遅延が積み荷の劣化を引き起こした場合、船主は滞船料に加えて損害賠償を受ける権利があるのだろうか?という問いである。それに対する判事の回答は「船主には当該権利がある」というものであった。
多くの弁護士は、ザ・ボンド(The Bonde)の事案で1990年に高等法院が判決を下した際にこの問いは解決されていたと考えていた。その判決によれば、契約に滞船条項が含まれる場合、船主は遅延に起因する損害賠償を請求する前に、個別の違反を示す必要がある。エターナル・ブリスの判事は、ザ・ボンドの判決が誤りだったと考え、反対の結論に達した。
ザ・タイ・プライズ(The Tai Prize)等の最近の判例では、本質的に不安定な貨物の輸送に関する損害賠償を得るために、船主は通常、航海用船契約に基づく黙示的補償に依拠することはできないと判断された。当該事案では、貨物が明らかに良い正常な状態であることを航海用船者が黙示的に保証したという船主側の別の主張も否認された。
エターナル・ブリスの事案では、船主は最終的に、港での長期停泊に起因し貨物損害が生じた場合に航海用船者から補償を得る一つの方法を見出した。高等法院の決定は、貨物損害賠償請求の分野以外にも広範な影響を及ぼす可能性が高い。