船舶間で人員を移動させる作業は高いリスクを伴います。オフショア業界では十分規制されているにも関わらず、類似の統制は海運業界では一般的ではありません。
この問題に対処すべく、クレーンを使って人員を船舶間で移送することに関して、ガイダンスが石油会社国際海事評議会(OCIMF)より発行されました。
同ガイダンスは、クレーンによる人員の移送に伴うリスクを概説し、正しい設備を使って安全に実施する最善の方法を提供しています。
ギャップを埋める
オフショア業界では、人員の移送に利用されるクレーンは「人の移送用」であるものとして認可されています。しかしながら、リスクや危険性が同じであるにも関わらず、海運界では安全性に対する認識が異なるためか、これまで着目されてきませんでした。以前より、利用できる船のクレーンであれば何であれ、その設計とは関係なしに何人もの人員を乗せて一度に移送することに何の制約もありませんでした。また、本船乗組員が行うかかる作業に伴う危険に関しては、油断もありました。
OCIMFからの新しいガイドラインは、この安全性のギャップを埋めるために作成されたものです。
万全の装備は正しい発想なり!
OCIMFはクレーンの必須要件について幾つかの推奨事項を提案していますが、その一部は以下のとおりです:
- クレーンは船体の中央部に平行に設置されている必要があります
- 人を乗せる時には、安全使用荷重(SWL)を50%削減すべきである
- 安全率10のワイヤー
- クレーンのブレーキは、ギアがニュートラルの時、緊急停止が起動した場合または停電に際しては、自動的に起動しなければならない
- ブレーキには手動操作優先機能が装備されていなければならない
- フックはセーフティーロック付でなければならない
- クレーンにはどんな状態からでも立ち直る装置がなければならない
指針には、人員移送バスケット(PTB)の設計にまつわる一連の重要な推奨事項が明確に述べられています。これには以下の項目が含まれます:
- PTBは完全に認可されたものであり、旗国および船級協会の要件を満たすものでなければならない
- SWL(または定員)と自重が明確に表示されている
- PTBは頑丈で、水に浮かび、転覆防止構造でなければならない
二度も三度も確認!
OCIMFは、計画保全管理システムに組み込まれた点検プログラムの重要性を強調しています。
これには、移送作業前に毎回必ず実施しなければならない、乗組員による使用前のチェックが含まれます。人員の移送には不測の事態に備えた計画の実施が必要です。これには適切なリスク分析に基づき、事故の際には必要となるかもしれないあらゆる安全設備の備えが含まれます。
知識は力なり
乗組員のトレーニングに関するガイダンスは、重要な役割を担う乗組員と、移送される人員とに十分な知識が備わっていることの必要性を強調しています。どのような移送であっても、誰もが作業を理解し、それぞれの役割を知っておくよう、実行前に行われる事前確認が極めて重要です。
誰もが学べます
OCIMFの指針はタンカー運航者に向けられたものですが、この最善の方法に関するアドバイスは、人員の移送を実施するいかなるタイプの船舶にも当てはまります。すべての運航者は、このような移送を安全でより効率的に行なうことを学ぶことが出来るのです。
John Southam
Loss Prevention Executive
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